婚活って大変なんだな。
結婚したいと思える相手とタイミング良く出会えるって奇跡なんだな。
辻村深月さんの「傲慢と善良」を読んで、まず感じたことです。
結婚は「ご縁」ってことを、この歳になって染み染みと実感しています。
選択肢が多いということは、逆に自分の生き方に迷ってしまいますね。
結婚しかり、仕事しかり。
ネタバレありなので、知りたくない方は読まないでください!
婚活で出会った架と真実の物語
男主人公は架(かける)。女主人公は真実(まみ)。
辻村深月さんの本は、「かがみの孤城」しか読んでいないのですが、かがみの孤城では主人公が中学生ですが、本書では男主人公が39歳、女主人公が35歳です。
物語は第一部と第二部に分かれていて、第一部は男主人公が語り手。第二部は女主人公が語り手です。
第一部はひたすらリアル。現実的な生々しさがすごくあります。タイトルの「傲慢」と「善良」を人間誰しも持っていて、ただただ人間って感情がドロドロしているよねと共感する描写がたくさんありました。
そんな描写も、谷村深月さんの文章だとすっきりと読めます。
私はもうすぐ40歳なので、学生時代から今までの人間関係を振り返りながら、うんうんとうなずきながらページをめくりました。
第一部はとにかくリアルでおもしろい。
現代の婚活について、一見いろんな人と出会える便利なシステムと思えるけれど、実際は選択肢がありすぎることが逆効果でもあるのだとよくわかりました。
婚活してすぐに相手を見つけられる人と、なかなか見つけられない人の違い、とか。
登場人物が婚活をするに至るまでのそれまでの生き方・過ごし方を知ることで、「結婚したいから相手を見つける」って気持ちも人によって全然違うんだな、ということがよくわかりました。
どんな結婚生活をしたいかビジョンがはっきりしているかどうか。
親に促されたり、周りが結婚していて、ただ焦って結婚しないといけないというだけなのか。
お見合い相談所のおば様の言葉が深かった!どんな仕事でも、プライド持っている方の言葉は深みがあっていいですね。
第一部はストーカーが誰なのかという推理とミステリーの要素も入っているので、その点も面白かった。
母子関係について考えさせられる
母子関係について想いを巡らすことも、この小説ではたくさんできました。
真実の母・陽子の過保護っぽいところや、そんな陽子の言う通りに30過ぎまで生きてきた真実にイライラします。
陽子と真実の関係は息苦しくて、陽子のような母親にはなりたくないって思うけど、なってしまうかもという怖さがある。
私自身、ティーンエイジャーの女の子を育ててる母親の立場として、母親の責任って本当に重い、苦しいと思わずにはいられませんでした。
母親として支配的になっていないだろうか、と反省しきりです。
子どもを自分(母親)の思いどおりにしようとするなんて、おこがましいことなんだと実感。
でも、勉強の習慣を付けるとか、身だしなみや、社会に出たときに困らないように親は口出しがやっぱり必要で。
学歴はやっぱり持っているに越したことはないし。
どこまで口出しするのか?いつも試行錯誤です。
息苦しい陽子と真実の親子関係
陽子と真実の親子関係は、母親が娘をどういう風に見守ればいいのか反面教師になる。
母親の思い通りに行かない子育てのほうが、大成功ってことなのかな。
真実の姉が陽子に反抗したように、中学生・高校生からは母親は本人の意思を尊重して、見守りとサポートが一番なんだろな。
母親自身の思いどおりに育った30の娘は、自分で自分のことを決められず、母親のせいだと人のせいにして、自分で自分の道を切り開けなくなる。
うーん、まさしく私の姉が真実に被るところがあったので、この辺は読んでてちょっと辛かった。
姉は真実と同じく、自分自身で大学選びや就活をしませんでした。家業の手伝い。当然、自分から動かなければ色んな人と出会う機会が無い。
家を出て就活を自分でやりなよと何度も何度も促した20年近く前を思い出しました。
そんな私の姉が、30なかばになってどうなったかというと、現実は小説のようにはハッピーエンドに出来ていないのです。
真実は30過ぎて動き出せた。すごいこと。一般的には、30歳までの生き方で、人の性格や行動はだいたい完成してしまうから、そこから自分を変えるのはすごくエネルギーがいる。
結婚もまたしかり。
結婚で環境を変えるのは、何も打算や駆引きが無い、20代のうちの「この人と結婚したい!」っていう勢いだけで決めちゃったほうが、個人的には上手くいくと感じる。
それは、私自身がたまたま結果オーライで結婚後の生活が、なんだかんだ言って幸福を感じているから言えることなのですが。
第二部の真実の成長エピソードがファンタジー
一転、第二部では、女主人公のファンタジーな逃避行となります。
第一部の架が語り手のエピソードが現実的な内容だったから、対照的に第二部の真実のエピソードの現実離れしたフワフワした感じがより一層際立っていた。
なぜ、振ったお見合い相手がやっていたボランティア活動に興味を持ったのかがいまいち不明。
中学生、高校生、それか20代前半までならギリギリありかなーとは思うけど、35歳で周りの迷惑を考えない逃避行をここまでしてしまうって、真実にちょっと引いた。
第一部の架の話が現実的で、登場人物の描写や心理にリアリティがすごくあったから、その反動もあるのかな。
第二部は、現実感がなくて、真実が日本ではないどこか優しい人たちだけで構成されている、遠い国に迷い込んだような印象を受けました。
第二部で出会う仙台の人達は、とにかく優しくて、人間誰でも持ってる、心の裏側にあるこの本でいう「傲慢」な部分がまったくでてこない。
真実の失踪中の金銭面はどうしてたのかなぁとか。アパートの家賃は、とか、結婚式場のキャンセル料は、、とかね。
何もそのへん考える描写が真実には出てこないので、ファンタジーだなと。
それだけ真実は迷惑かけてる周りの人や現実を考えられないお花畑な思考の人なのか。
自分がつけられた70点という点数を盾にして、どこまで架を傷つける気なのか。
ただ、真実は少し周りの人より遅めではあったけど、30代から自分の力でもがいて自立していく。劣等感を持ちつつも、外の世界で頑張っていく。
真実が勝手すぎて架が可哀想にも思ったけれど、この時間があったおかげで、真実は自分の殻を破れたんですね。
誰しも小っ恥ずかしい経験を重ねて大人になっていく。
人と比べず、自分の幸せのために行動する。
何歳からなんて関係ないですね。
第二部を読んで良かったことは、そんな勇気がもらえたことです。
ラストはハッピーエンドに見えて、実はホラー?
架は真実のどこが好きなのか、それが読み取れなかった。残念。
ただ単に、自分の傲慢さを認識してしまう婚活を、1からやり直すのが嫌って理由だけで、真実と結婚した気がしました。
真実は、自分の思いどおりに事が運んでめちゃあざとい。
嫌いではないです、どんどん邁進してほしい。
周りの雑音も、自分の都合のいいように解釈して、良き妻、いずれは良き母となれますように。
でも、自分の思いどおりにいかない時に、狂言ではなくて本音でぶつかりあって話し合える関係性を、架と築いていってほしい。
本気でケンカしないまま、結婚して大丈夫かいな。
婚活の苦しい感情を味わいました
長々と感想を書きましたが、とても面白い本でした。
たまたま結婚適齢期にお互いに結婚したいと思える相手と結婚できることって奇跡。
婚活の苦しい感情を味わえます。
興味がある方は、是非読んでみてください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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