芥川賞を受賞した高瀬隼子さんの「おいしいごはんが食べられますように」を読みました。
自分が社会人になってからの20代の頃を、いろいろ思い返すこととなった本。
題名から、もっと食べ物でほんわかする本かと思ってましたが、全然違った。
私の今の立場は、藤部長の奥様かな。
会社の人間関係は難しいものですが、専業主婦をしている今、少し懐かしくもあります。
社会人として一生懸命働いた経験のある人は、とてもリアリティを感じる作品です。
ネタバレありで、モヤモヤを消化したくて書いた感想と犯人考察。
後半のお菓子を捨てたもう一人の犯人は誰だったのか気になりませんか?
私の想像力を膨らませた考察ありです。未読の方はご注意くださいね。
芦川さん。いるいる、こんな人!
芦川さん自身が語り手となっていないので、芦川さんの気持ちは小説の中に書かれていません。
二谷視点と押尾さん視点のみで小説は描かれています。
芦川さん視点で語ったらどうなるかすごく読みたいですね。
- うわべ通りの天然の困ったちゃん、清らかで純真な芦川さん?
- 全てが計算で、腹の中は真っ黒な世渡り上手の芦川さん?
読みたいのは真っ黒な芦川さんだけど、飼い犬にナメられてるところから察するに、本当に純真な人なんだろうと推察します。
- 残業続きで社員全員がピリピリした状況の中、いつものペースでしか仕事をしない芦川さん。
- しかも、頭痛で早退した次の日に、手の込んだ手作りのお菓子を配る芦川さん。
- そんな芦川さんを、社内の人は受け入れている。
この状況、私も押尾さんのように絶対苛立ちます。
しっかり注意してくれる人が社内にいないのは、すごく恐いことですよね。
押尾さんに共感
仕事ができる、頑張り屋さん。
私は二谷がさっぱり理解できないけど、押尾さんが二谷に惹かれた理由はわかる気がした。
自分の気持ちを吐き出せて、一緒に適当にごはんを食べてくれる相手っていいよね!
二谷には、芦川さんより押尾さんのほうが合っています。ただ、押尾さんにはもっと素敵な人が絶対現れるから、関係を持たなくてよかった!
押尾さんの最後の挨拶は、スッキリした。押尾さんのイライラする気持ち、とってもよくわかります。
作品の中で、一番共感できる人物ですね。
押尾さんの能力を正当に評価してくれる転職先でありますように、と応援せずにはいられません!
二谷が理解不能
「さん」付けで呼びたくない男、二谷。
なんで二谷は芦川さんと付き合う?
ラストでは芦川さんと結婚に進みそうな雰囲気。
わからない。本気でわからない。でも、こういう仕事ができる男性、いますよね。
二谷は本当に芦川さんを好きなのか。
芦川さんを不幸にしたら許せん。
二谷と芦川さんは、本音をぶつける話し合いをしたことが無さそう。
そして、芦川さんは、二谷の本心に気がついている気がします。
職場に彼女(芦川さん)がいるのに、別の女性社員(押尾さん)と頻繁に二人きりでご飯を食べに行く二谷が理解不能。
あわよくば関係を持とうとするところも意味不明。
二谷の、全然誠実さがない自分を正当化して、心の中で芦川さんのせいにしているところ。
結婚したら、二谷は絶対モラハラ夫になるよ~!芦川さんは耐えるのか、隠された本性を出して戦うのか!
続きが読みたい!!!
大学時代のグループLINEに、何年も一言も返信しないのも、理解しかねる。
唯一共感したのは、二谷がジャンキーな食べ物を食べて、リセットしたいって気持ちになるところ。
健康的な食べ物であっても、半分強制で食べさせられるのってつらいです。
芦川さんにしっかり言えばいいのに。話し合いができない夫婦は、不幸になるぞ!
素を少しは出せる押尾さんではなくて、自分より下に見れる芦川さんを選ぶあたり、二谷はひねくれてるなーと思う。
お菓子を捨てた犯人は二谷と、あともう一人は誰?
藤部長が芦川さんに注意できないのはキャラ的にわかるのですが、フルタイムパートの原田さんなど他の社内の人々は、なぜ芦川さんに甘いのでしょう?
やんわりと「手作りお菓子は辞めておいたほうがいいよ」と芦川さんにサラッと進言してあげるのが、人生の先輩としての役割ではないかと思うのですが。
社内の空気に、みんな合わせているってことなんでしょうね。あるあるです!
私は、フルタイムパートの原田さんが、お菓子を捨てた犯人として一番可能性が高いと感じました。
パートの立場だったら、自分より正社員として待遇が良いのに、自分より仕事ができなくても許されているという状況、すごくムカつくと思うのです。
でも、表面上は気持ち悪いくらい芦川さんに優しくする。
裏では、お菓子を捨ててストレス発散しているんじゃ・・・と思ってしまいました。
そして、自分には手に入れることができない正社員の立場で、しっかり役割を果たしている押尾さんのことが気に入らない。
同じ女として、嫉妬があるのかな~と。
罪を着せてしまえ~という感じで、押尾さんに濡れ衣を着せた、と。
結局、二谷以外に誰がお菓子を捨てていたのか小説からはわかりませんでしたが、フルタイムパートの原田さんじゃないかな~と私は感じましたよ!
働き方は人によってちがうことはそのとおり
芦川さんは、正社員として1人分の仕事ができません。
フルタイムパートの原田さんのほうが仕事ができるという状態。
でも、そんな芦川さんは、社内に受け入れられている。
一見、理想的な職場ですね。
でも芦川さんができない業務の分を、二谷や押尾さんなど、他の社員が残業して処理することが当たり前となっている。
他の社員にしわ寄せが行っていて、それに対して不満が持たれているなら、理想的な職場ではありません。
わかりやすくボーナスを増やすとか、お給料の面で差を付けてもらえれば、フォローされる側、フォローする側の双方が納得できるところですが、このお話の管理職、藤部長や副支店長にはできそうにないですね。
芦川さんは20代の独身女性ですが、時間的な制約の多いワーキングマザーに置き換えてみると、日本の至る所でこのような事態は勃発していますよね。
管理職がしっかり社員の貢献度で差別化できる有能さを持っていれば、しわ寄せを被っている社員は離職せずに現職でもっと貢献しようってなるだろうに~。
そして、逆に仕事ができるワーキングマザーは、勤務時間ではなくて仕事への貢献度で正当に評価してもらうことができて、もっともっと頑張ろうって思えるんでしょうね。
みんなが謙虚に、協力し合って会社に貢献していける理想的な職場。どこかにあるのかな?
結局は、できる人に仕事が集中してしまうのが世の常なのでしょうが・・・。
ガツンと、
- 社員なんだからパートと同じ働き方ではダメ
- お菓子作るなら、身体を休めてその体力気力を仕事に費やすこと
- 社員一人分の工数をしっかり働いてほしいこと
これを上司が芦川さんにしっかり言わなきゃ、そりゃ有能な押尾さんは、こんな会社やってられんわと退職するに決まってます。
もっと、ヒアリングとか考課査定のときに部下の不満を拾い上げるコミュニケーションをとるとか、藤さんも副支店長も頑張りなよーと思いました。怒
社内恋愛はバレますよね
特に、人生経験豊富なマダムたちは、若い社員さんの男女関係をすぐ察知します(笑)
二谷、芦川さん、押尾さんの関係の中で、押尾さんだけが悪者になってしまった社内の雰囲気が気分悪かったです。
なぜ、押尾さんが吊るし上げられたときに、二谷は何も擁護しないのか?
二谷と芦川さんが善で、押尾さんが悪と決めつけている社内の雰囲気、気味が悪かった。
そしてやっぱり「芦川さんは悪くない」って空気を受け入れている。
社内の人たちがおかしいよね。
まとめ
すごく面白かったです。
今の私の立場は、藤部長の奥さん。
社内の人間関係のドロドロとは無縁の生活のため、この本で久しぶりに職場の色々を思い出しました。
当事者じゃなければ、こういうの傍から見てて楽しんでいた性格の悪い私です。
藤部長の奥さんが、家出から戻ってきてくれますように!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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