子育て

【あの家に暮らす四人の女・三浦しをん】感想・ネタバレ。クスっと笑えて勇気が湧く本。

あの家に暮らす四人の女・感想
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結婚していなかったら、どんな暮らしをしていたか。

時々、夢想にふける時があります。

そんな時に目についたこの本を、読んでみることにしました。

↓単行本は四人の女が目印です

↓文庫本はカラス(おそらく善福丸)が目印です

ネタバレありで感想を書いていますので、未読の方はご注意ください。

風変りな同居生活がなぜ始まったのか

  • ずっと実家暮らしで刺繍作家の主人公・佐知。37歳。
  • 祖父が成功した土地持ちだったため、不動産管理で不労所得で暮らす佐知の母・鶴代。年齢は60代。
  • 水難の相から避難して居付いた佐知の友人・雪乃。恋愛を斜に構え気味。37歳。
  • 彼氏がヒモ男→DV男→ストーカーと本性を現し、身の危険を感じて避難した雪乃の会社の後輩・多恵美。27歳。

シェアハウスに暮らす4人で、それぞれの生活や感情の変化を楽しむ物語なのかなぁと気軽に読んでみました。

序盤は、女性4人の関係性を知りたくて、ページをめくる手がすすみます。てっきり同世代の女友だち4人の話と思っていたら、うち2人は母子だったってことで、今後の話の展開が予想できません。

女性4人のコミカルな会話や仕草、掛け合いが現実的にありそうでクスッと笑える。

かと思えば、同居に至った経緯は、現実的には有り得ないと思う設定。雪乃の強引さと、佐知の謙虚(?)さのおかげで成り立つ同居かな。それとも、私の経験が少ないだけで、こういう同居ってよくあるものなのかな?

佐知と雪乃の37歳の女同士の部屋での本音の会話は、すごーく共感しました。

新宿伊勢丹、西新宿のオフィス街、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩20分の杉並区にある閑静な住宅街の中の洋館=あの家、など、東京のJR中央線ユーザーだったら情景が思い浮かぶ景色がたくさんでてきます。

善福寺川沿いを、お散歩したくなりますね。

いい意味で期待をどんどん裏切られていく展開に

序盤の展開から、淡々と4人の共同生活が描かれると思っていたら全然違った(笑)。

  • 長生きのカラス・善福丸が鶴代の過去を語り出す。
  • 雪乃が2度目の水難の相に遭う。
  • 部屋のリフォームで、内装工事の梶さんがいい男でしかも独身という嬉しい設定。
  • 河童のミイラの話になり、シュールすぎて想像力が追いつかなくなる(笑)。
  • ストーカーを自分たちで退治しちゃう。
  • 盗人が家に侵入してくる。

などなど、後半は現実的ではないお話のオンパレードになっていきます。

でも、登場人物たちの、ちょっとした仕草や、考えていることや話していることは、すごく面白くて共感します。不思議な心地になってくる本です。

途中から話は不労所得で生活するお嬢さま・鶴代の過去の話に。財産の管理って、税金のこととか実は気苦労が絶えなくて、なかなか大変そうだという印象。

一企業に、社会人として働いた経験がないと、男も女も世間知らずになるのは事実だよね~と共感したり。

鶴代はお嬢様然とした仕草や、娘・佐知との会話がチグハグで笑えてチャーミング。生きるための芯が強いお嬢様(おばあちゃま?)で、好感が持てます。

この鶴代の過去の話、佐知の出生と父親の存在についての話から、淡々とした日常のように書いていながら、ドタバタハチャメチャな展開になっていって面白かったです。

語り手が長生きのカラスってところがね、もうね(笑)

水難の相に雪乃が2度見舞われてしまったり、河童のミイラが出てきたり!

内装工事の梶さんが登場してきてからは、恋愛要素も加わって、一気に読み進めることができました。

佐知の生きがいとも言える刺繍について、語り合える存在になりそうな梶さん。不器用そうだけど、誠実でイケメン!家族経営の会社だと、なかなか出会いがないからね。40近くまで独身っていうのも、なんだか納得できる設定でした。

心に響いた雪乃の言葉

この言葉が心に残りました。

言葉というより、雪乃が「ぼんやりと思ったこと」ですね。

譲りあったりぶつかりあったりしながら、それでもだれかとともに生きていける能力の保持者

こそを、大人というのかもしれない。

単行本の47ページより抜粋

「大人」の定義って難しいですよね。

単純に、

働いて収入を得て生活できる人=自立している人=大人

っていうほど簡単なことではないと、アラフォーになって感じるようになりました。

20代の頃は、きちんと1人前に働いて、自立することこそ大人と信じていたのですがね。

色んな事情で収入を得られない時期はあるし、歳をとれば、いずれは社会に支えてもらう存在になる。

経済力があっても、自分勝手で子どもだなーと感じる人もいる。

でも、私の周りの、私が尊敬する身近な人たちに共通することって何だろう?って思うとき、この言葉がしっくりきました。

「大人」が居ると、色々あるにはあるけれど、周りが平和に、穏やかになる。それが大人の定義ってことにストンと納得。

経済力はあるに越したことは無いけれど(本音)

今、私は専業主婦だからこそ響いた言葉であるかもしれないけれど(切実)

収入が無い今の自分を卑下することなく、この言葉を胸に今の貴重な日々を過ごしていこうと思いました。

忘れてはいけないのが山田さん

高倉健に憧れる山田さん。80代のおじいちゃんだけど、とっても元気。家に対して恩義を感じているからなのか、武士の忠臣のように、鶴代と佐知に忠誠を誓っている人。

守衛であり、離れに住む同居人であり、ちょっと佐知の父親代わりだったりな不思議な関係。

雪乃と多恵美との同居がバレてから、少しずつ山田さんと女4人との距離感が変化していく様子が、とても微笑ましく思いました。

この本だから、山田さんの存在が自然に感じる不思議。

お菓子やごはんを、ご相伴にあずかるシーンが後半に増えてきて、「山田さん良かったネ」って声をかけたくなる愛すべきキャラクターです。

この本が伝えたかったこと

まず、題名にもなっている「あの家」。本全体を包んだタネ隠しになっていたとは!おみそれしました!!

佐知の実の父親が、この本の語り手だったのです。

佐知の父親は、悲劇的な最期にもかかわらず、魂となってノホホンと家の地縛霊として過ごしているのが、なんか嬉しい。

そして、実の父親について何も知らない佐知が、最終的には河童のミイラのおかげもあって、ストンと自分自身に納得できるようになります。

さらに、強引な雪乃のおかげで(笑)、佐知は梶さんとデートの約束をすることができます。佐知の今後に希望が溢れる形で物語は終わります。

この本の一番最後に書かれている文章は、今を頑張って生きている人を勇気づけてくれますね。

読後は、自分は見守られているんだ!!!って、不思議な安心感に包まれます。元気と勇気が湧いてくる本です!

三浦しをんさんの文体自体が、笑えて元気になれるのに、最後には生きる勇気までもらえた気分です。

私事で恐縮ですが、

私自身は、母と姉を亡くしています。母と姉は、きっと私のことをいつも見守ってくれていて、私の知らないところで実は色々助けてくれているんだと思い込んで過ごしています。

なんだか、その私の過ごし方に、太鼓判を押してもらったような気がして嬉しかったです。

まとめ

現実離れした展開に笑えて、でも登場人物の掛け合いや気持ちの機微は現実を感じて共感しきり。

いい意味でたくさん裏切られる本です。

最終的には、生きる勇気をもらえました。希望あふれる終わり方で、読後感が最高です。

気楽に本を読んで、元気になりたいなって時に、とってもお勧めしたい本でした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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