西島秀俊さん主演のドラマ「シェフは名探偵」。
このドラマの原作は、短編が詰まった3冊の小説です。
近藤史恵さんの小説は、自転車のロードレースが舞台の「サクリファイス」「エデン」を読んだことがあります。
考えてみれば、ロードレースもヨーロッパが舞台。そして推理も楽しめるところが共通点ですね。
さっくり読めるので、普段あんまり本を読まない人でも無理なく楽しめます。
タルト・タタンの夢―パ・マルシリーズ1冊目―
1冊目は「タルト・タタンの夢」です。
もう、ドラマの雰囲気がそのまんま。語り手の高築くんの雰囲気が、ドラマの濱田岳さんと同じです。
原作の雰囲気を忠実に、ドラマが再現されていることに驚きました!
収録されているお話はこちら
- タルト・タタンの夢
- ロニョン・ド・ヴォーの決意
- ガレット・デ・ロワの秘密
- オッソ・イラティをめぐる不和
- 理不尽な酔っ払い
- ぬけがらのカスレ
- 割り切れないチョコレート
原作の三舟シェフ(西島秀俊)、志村シェフ(神尾佑)、ソムリエの金子さん(石井杏奈)の雰囲気や風貌はちょっと違う。
原作の三舟シェフの見た目は、なんだかお笑い芸人の笑い飯・西田さんにしか見えません(笑)
活字でもそう表現されているし、何より表紙絵がそっくりです!
志村シェフも、ドラマとは違って、誰とでもうまくやっていける中立的な平和主義者に描かれています。
ソムリエの金子さんは、短いショートカットで化粧っ気がない描写。見た目は違うけど、俳句をたしなむところは同じですね。女性がパートナーだという描写は原作には出てきませんでした。
ギャルソンの高築くん(濱田岳)は、そのまま!背が低いという描写は無かったけど。
ただ、4人の雰囲気=パ・マルの雰囲気が、ドラマと原作は同じ!
もう一回ドラマを見直しているような感覚になれて、ドラマの映像を思い出しつつ小説を読みました。
ポイントとなるフランス料理がどういうものか、ビジュアルですでにわかっているのも、読みやすかったですね。
唯一、ドラマ化されていなかったお話は・・・
1冊目の短編7つの中で、1つだけドラマに盛り込まれていないお話がありました。
「理不尽な酔っ払い」です。
なんでだろうと考えてみたのですが、このお話だけ、推理のポイントが料理では無かった!
他のお話は、フランス料理が推理のキーポイントとなっているのです。
高校野球の部活がテーマで、このお話だけちょっとフランス料理の雰囲気からはずれるんですね。
推理のポイントも、なんとも豪快なトリックで(笑)食べ物は食べ物なんですが・・・!
ドラマにはないお話が入っていたので、楽しめました。
パ・マルが入っている商店街にある、和菓子屋のご主人のお話です。
気になる方、是非読んでみてくださいね!
ヴァン・ショーをあなたに―パ・マルシリーズ2冊目―
2冊目は「ヴァン・ショーをあなたに」です。
ドラマを観ているから、ヴァン・ショーと聞いてすぐにホット赤ワインが思い浮かびます。
収録されているお話はこちら
- 錆びないスキレット
- 憂さばらしのピストゥ
- ブーランジュリーのメロンパン
- マドモワゼル・ブイヤベースにご用心
- 氷姫
- 天空の泉
- ヴァン・ショーをあなたに
語り手がギャルソンの高築くんではないお話が3編
1冊目と違って、こちらはお客さんが語り手になってたり、三舟シェフがフランス修行中に出会った人が語り手になっていたり、ちょっとドラマとは雰囲気が変わるお話があります。
お話の内容自体は、ドラマで使われているのですが、語り手が違うだけで雰囲気がガラリと変わりますね。
印象深かったのは、「天空の泉」。こちらはドラマには出てこないお話です。
サン・テクジュペリの「星の王子様」が出てきます。久しぶりに読み返したくなった!
トリュフのオムレツももちろん美味しそうだし、フランスで修行中の三舟シェフもいつもと違ってなんだか新鮮。
でも、それより何より驚いたのは!!!
↓以下、ネタバレなので読みたい方だけクリックしてくださいね。
「天空の泉」の語り手である江畑ヒサコさんのパートナーが、同性の女性なのですね。
パートナーが男性か女性かどちらかよくわからない描写でお話が進んでいきます。
語り手は、パートナーをカミーユと呼んでいるのですが、カミーユって男って思っていた(機動戦士Zガンダムの主人公、カミーユって男の子だったよね)。
短編の最後の1行で、江畑さんのパートナーが「ブルネットの彼女」!
えぇ、女性だったんだ!
この驚きが、とっても新鮮で面白かったです。
※ちなみに、ブルネットとはフランス語で「栗色の髪の女性」のことだそうです。
原作では、ソムリエの金子さんのパートナーのお話がありません。
ソムリエの金子さんが福岡に同性の恋人を追いかけるためにパ・マルを辞めるお話は、この「天空の泉」から着想を得てドラマができたのかな、と思いました。
ドラマ化されていなかったお話
「錆びないスキレット」は、ドラマ化が難しいですね。推理の真相がけっこう衝撃的でした!
「天空の泉」も話の内容はドラマ化されていませんでしたね。
マカロンはマカロン―パ・マルシリーズ3冊目―
3冊目は「マカロンはマカロン」です。
収録されているお話はこちら
- コウノトリが運ぶもの
- 青い果実のタルト
- 共犯のピエ・ド・コション
- 追憶のブーダン・ノワール
- ムッシュ・パピヨンに伝言を
- マカロンはマカロン
- タルタルステーキの罠
- ヴィンテージワインと友情
私、てっきり三舟シェフとお父さんのお話が「マカロンはマカロン」に収録されていると思っていたのです。
しかし!原作には三舟パパ出てきません!
三舟シェフとお父さんのお話は、ドラマオリジナルだったのですね!
ビストロの店名と絡めて、ドラマの始めから終わりを繋ぐ一番のミステリーだったので、てっきり原作にあるものと思っていました。
原作では、それぞれのお話が1話1話で完結していて、日常のちょっとした謎をフランス料理と絡めて解決していくスタイルが貫かれています。
ドラマと結末が少し異なるお話がちらほら
ドラマも原作も、ほぼ同じ。でも、結末はちょっと違うっていうお話がけっこうありました。
ドラマは人情を交えて感動的な演出にあえてしているけれど、原作は「現実ってこんなものだよね」って妙に納得できる終わり方!
最たるものは「ヴィンテージワインと友情」ですかね。
大学生グループがパ・マルにやってくるお話です。お金持ちのお嬢様・嗣麻子(しまこ)が高級なワインを持ち込んで、抜栓料がポイントとなるお話です。
ドラマでは、原作のさらに先を描いてくれた感じがしました!こうなったらいいな、を具現化してくれたというか。
ドラマは夢を見せてくれて、原作小説は現実を見せてくれました。
「タルタルステーキの罠」も、原作はお姑さんに何もフォローが入っていなかった(笑)
逆に、現実的なのは原作だよなと妙に納得しました。
「ムッシュ・パピヨンに伝言を」も、最後が少しドラマとは違っていて、違いを比べて読むのが面白かったです。
原作はアッサリ終わるのですが、このお話は、ドラマでムッシュ・パピヨン役の山本耕史さんの動画撮影が盛り上がって良かったですよね!
山本耕史さんはドラマ「きのう何食べた?」にも小日向さん役で出ているので、ゲスト出演されてたのがすごく嬉しかったな~。
ドラマ化されていなかったお話
「青い果実のタルト」「追憶のブーダン・ノワール」はドラマに使われなかったお話でした。
ドラマの雰囲気には不向きな内容?不倫がテーマですからね~(笑)ラストがほのぼのしない!
血のソーセージは、ドラマで調理風景を見てみたかったです。
まとめ
3冊読了して感じたこと。
本当に、本当に!フランス料理を食べに行きたくなりました!
さらっと頭に入ってくる読みやすさで、推理も面白いし、とてもおすすめです。
短編だから、子育て中で細切れにしか時間がとれない場合でも、読み進められます。
ドラマを観た方はもちろん、ドラマ未見の方でも、とっても楽しめる小説です。
ドラマはU-NEXTの31日間無料トライアルで視聴できますよ!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。